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魔術が日常的に存在した時代でさえもその強大な力は危険視されていたらしく、それ故に軍人に志願した魔女は魔力を封じられた。
しかし、魔力を封じられても姿を消したり、変えたりすることは魔女の得意分野。
今回は魔力のない魔女が窃盗を働いたというわけだ。
そしてここでもうひとつの問題が姿を現す。
「さて、これが一番重要な問題ね。 何故、国宝の宝石を盗んだのか。そして何故各地で窃盗を働いたかということなんだけど…。」
ここまで言い終えると、隣でアリアが3枚ほどに束ねられた紙をペラペラとめくり始めた。
「今回の件以外で、各地で盗まれた物は全て宝石類です。 純粋に宝石、もしくは金銭目的での犯行なのか、それとも別の意図があったのか…。」
そう言われて牢の中の魔女はうっすらと口元を歪ませて微笑む。
「そちらの魔眼の子。 貴方も魔女ならわかるわよねぇ?これから何が起ころうとしているのか。」
魔女はエネリに視線を送り呟く。
ジェネシスとアリアは怪訝な表情でエネリを見る。
「エネリが魔女?どういうこと?」
「何も分かっていないのね。 私の目をご覧なさい。」
二人は魔女の目を見つめる。
紫色に輝く妖艶な瞳。ぼうっとしていれば吸い込まれそうになりそうな、なんとも不気味さを覚える瞳。
「その子の紫色に輝く左目。 魔女しか持たないと云われる"魔眼"をその子は持っている。」
皆が押し黙る中、更に魔女は続ける。
「それに昨日私の存在に気づいたのもその子だったわね。魔女の足跡は普通の人間には見ることが出来ない。 それをその子は簡単に当てて見せた。その"魔眼"でね。」
エネリは何も話そうとはしなかった。
ジェネシスとアリアも何も発せられずにいた。
だから私が話すことにした。
「そうね。確かにこの子は魔女だわ。」
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