極上の

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 ○月△日。  俺は腹が減っていた。  ここ最近、家と職場の往復の繰り返しで。  朝ごはんに菓子パン、昼ご飯にコンビニ、そして晩ご飯にコンビニのコンビニ三昧だ。  コンビニがないと俺は死ぬだろう。  だが、こうしてコンビニに通いつめていても待っているのは死だとも思う。  食っても食っても、満たされはしない。    そろそろ、心身ともに限界を感じる。  だけど、飯の為に親を頼りたくはないし、くたくたに疲れて帰ってきてから自炊なんて、冗談じゃない。 「あったかい飯、食いたいな……」  電子レンジでチンとかでなく。  誰かの手で作られた飯が。      目の前には、熱いほどに温められた弁当がひとつ。  いつも通りの日常だ。  これを食って寝る。それが、俺の日常だ。 「……いや。違う」  ミシリ、と手の中の割り箸が悲鳴をあげて真っ二つに折れる。  確かにここ数年、コンビニ弁当は美味しくなった。だけど、俺が求めるものは違う。  開け放った窓から漂う魅惑の香りに、喉が鳴る。
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