極上の

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 人間は誰しも何かしらの努力をして生きている。  だけど、目標を達成するためにはただ努力をしているだけではだめだ。  きちんと栄養のあるご飯を食べて、ぐっすりと眠る。  ただそれだけで、明日を歩いていける。 「……ご馳走様でした」  そっと箸を袋に戻して両手を合わせる。  ご馳走様、なんて――久しぶりに言った。  感謝の心を忘れていたことも、思い出した。  俺は今まで、深夜まで頑張って働いているコンビニの店員さんにきちんとお礼を言えていただろうか。   「あらあら、綺麗に食べてくれてありがとう」 「……こっちこそ、ありがとうね」    ふふ、と嬉しそうに微笑んだおばちゃんは、空になった俺の湯呑にあたたかいほうじ茶を注ぎ足してくれた。   「おばちゃん、また来るよ」 「はい。明日もお仕事、頑張ってね」 「うん」  おかげで、明日もまた頑張れる。  ……ありがとう、鰻様。最高に美味かった。  米一粒すら残っていないお重に心からの感謝を送り、俺はまた戦いの日々に戻る。  大丈夫。  鰻様のパワーがあれば、乗り越えられるから。 .
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