燈火-トモシビ-

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* * * 雨。 外は雨が降っていた。 この雨は明け方まで続くとニュースは言っていた。 昴はあの噂の丘に来ていた。 時刻は深夜。 雨音が全ての音をかき消している。 今夜は新月のはずだが、 雨粒を薄く照らしているのは紛れもない満月だった。 その満月の下、一軒の店が立っていた。 まるで物語の世界から飛び出してきたかのようなこぢんまりとした洋風の建物。 その窓からはオレンジの光が漏れ出ている。 看板に店名らしき文字が書かれているが、なんと書いてあるのか分からない。 英語のようにみえるがそうではないようだ。 重厚なアーチ型の扉には一面に百合のレリーフが施してあった。 それは見事なものだったが、いつまでも眺めている訳にはいかない。 昴は意を決して扉のドアノブに手をかけた。
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