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十回以上の時間遡行。
昴は70年程の寿命を使ったことになる。
それの意味する所に気付いて昴は愕然とした。
それでも俺は、ただ……。
「残念ながら貴方の寿命はここで終わりです。
貴方が長生きすることを妹さんも望んでいたことでしょう。
そして貴方が彼女を生き永らせることをしなければ、彼女はイジメに合って失意のうちに亡くなることもなかったでしょう」
項垂れる昴の目の前に店主は火の灯っていない角燈を差し出して、その小さな扉を開けた。
昴の躰が徐々に光り始めたかと思うと輪郭がぼやけて、収縮していった。
最後には蜉蝣ほどの小さな燈火になってしまうと、角燈の中に吸い込まれていった。
燈火は角燈の中でゆらゆら揺れて瞬く。
店主はそれをカウンターにそっと置いた。
「知っていましたか?
人には過去を変えることは出来ても、
運命を変えることはできないのですよ」
外では雨が降り続いている。
呼応するように闇は深さを増していく。
月はいつの間にか沈んだようだった。
【 End. 】
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