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今度は逆に彼女の手を取る
「ちょっと来て……」
そしてそのままカウンターを通り、奥の厨房へと連れ込んだ
握った彼女の手から緊張が伝わって来る
少し薄暗い厨房の明かりをつけた
振り返った時に見えた彼女の顔はアルコールの効果もあってか真っ赤になっている
だが、俺はお構い無しに話し掛ける
「ねぇ、なんか作ってよ……」
「えぇっ!!……」
「言ったじゃんファンだってっ……もう一つカミングアウトするとさぁ……」
俺はこの1ヶ月繰り広げられた戦いの日々を熱弁した
どんな苦難があり、誰の料理が原因でそうなったのかも含めて全てだ
彼女は何度も何度も平謝りするが、今やそれはどうでもいい
俺の目的はただ一つ
「ホントにっ……何でも良いから料理作ってよっ……」
「………でっ、でもここ………他人の店だし……」
「あいつとは友達だから大丈夫だってっ……ねっ?お願いっ!!……」
もはや営業の極意など微塵も使わなかったが、なんとか彼女の了承を得る事が出来た
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