2人が本棚に入れています
本棚に追加
ブラインドが自動で上がり、部屋に差し込む朝日で俺は覚醒する。
一日の時間は短い。俺はベッドからすぐに起きると、スポンサー会社から出向している美人秘書が挨拶している横を半ば無視する形で通り抜け、既に用意されていた朝食の卓に着き、最新の昆虫食を頬張る。
言っておくが、昆虫食を見た目で嫌うなんて時代遅れもいいところ。こんなに美味く、そして完璧な栄養価の食事なぞ他には無い。
それを食べ終わると食器の片付けは秘書に任せ、俺はトレーニングルームに入る。
スタープレイヤーは健康な肉体こそが第一の資本。一通りのメニューをこなし、最後にランニングマシンで駆けている最中、手首に付けたコンソールに着信の表示が点滅する。
コンソールを操作、ランニングマシン前方の白い壁に連絡してきた相手の姿を投影する。
「マルス。クランのアライアンスについて君の意見を聞きたい」
いきなりだ。感情表現の乏しい顔で、その男は挨拶も無しにいきなり本題を突きつけてきた。
「おはよう、くらい言ったっていいと思うぜ。それに俺は、オフラインの時にまで友人にプレイヤー名で呼んで欲しいとは思わないなあ」
「失礼。おはよう、ジョン」
「Hi,スタンリー」
彼こそは我がクラン『アンタレス』の幹部であり、俺よりも遥かに年上の三十台の男性。本名はマーティン。強く、賢く、頼もしい奴だが。驚くほど笑わない。今だって俺は自分の事を本名で呼べと言いながら相手のことはプレイヤー名で・・・・・・ああ、例え脳内でも笑いどころの説明をするのは鬱陶しいな。
最初のコメントを投稿しよう!