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ブロンドの美人秘書が運転する車の中、俺は煌びやかな街の電灯が通り過ぎていく様子をただぼうっと眺めていた。
「・・・・・・サー、宜しいでしょうか」
運転席から声が掛かった。何度か躊躇ったのか、彼女の声にはどこか臆病な性質を含んでおり、しかし俺はその理由に心当たりがあった。
「あんまり面倒なことは言うなよ。そもそも誘ったのはそっちだろ」
女は先回りするに限る。
スタープレイヤーにはスポンサーが付き、そこから金がザクザクと入るので食うに困らないどころか、俺の年収に及ぶ個人なんてそういない。
豪邸を持ってるしボートもあれば高級車も何台もあって自家用飛行機まである。まぁ忙しくてそれらには全然触れてもいないんだけど。さらに有名人の知り合いも沢山いて、今付き合ってる女だってスーパーモデルってやつだ。
それと両親が舞台俳優と女優だったせいか俺の顔の造型も良いらしく、自慢じゃないがスタープレイヤーになるよりずっと前から腐るほど女に言い寄られてきた。つまりこの手の人間は、俺の周りでは尽きる事が無いってワケだ。
牽制されたきりで秘書は黙りこくり、やがて一時間ほどが経過して車は目的地に到着する。
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