【第一章】『プロポーズ』

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 その翌日、拓海と紗弥加は紗弥加の実家に足を運んだ。 静岡の実家に帰りついた二人は実家の玄関前で紗弥加がチャイムを押すと、はずんた声で二人を出迎える香織。 「いらっしゃい二人とも」 この時拓海の姿を見た香織は、紗弥加から連絡をもらった時の予感は間違いではなかったことに気付いた。 「初めまして、五十嵐拓海と申します」 「こちらこそ初めまして。どうぞ上がって」 香織の招き入れる声に奥村家へと上がる紗弥加たち。  紗弥加が玄関を上がると拓海も『おじゃまします』そう一言挨拶をして紗弥加に続く。  その後居間に通された二人は居間の大きく重厚なテーブルに座っている父親の孝之に挨拶をする。 「ただいまお父さん」 挨拶を返す孝之であったが、その声は暗く沈んでいた。 「久しぶりだな紗弥加」 そこへ後ろから顔を出した拓海が挨拶をする。 「初めまして、五十嵐拓海と申します」 「まあ座りなさい」 「失礼します」 孝之に促された拓海が孝之の対面に座ると、それに続くように紗弥加も拓海の隣に座る。  母親の香織も孝之の隣に座ると緊張しながらも意を決して拓海が口を開いた。 「五十嵐拓海と申します」 「それはさっき聞いた!」 威圧的な物言いで言う孝之。 「年末の押し迫った忙しいときに突然押しかけてしまって申し訳ありません。できるだけ早くご挨拶をしたかったもので」 「そんなことは良いから用件を言いなさい」 「分かりました。お義父さん、お義母さん」 「別に俺たちは君の父親でも母親でもない」
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