燈された灯り

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『君の部屋は用意してある。執事長の本村に案内をさせる』 玄関で出迎えていた小柄な男性が、スッと前に出てゆっくりと頭を下げた。 『君は美術品だけでなく、紅茶の違いも分かるようだな。まぁ、それだけではない様だが』 公爵は表情をあまり変えずに、しかし、声色はどこか楽しげに言って、部屋を出て行った。 部屋へと案内される廊下を見ると、どれも明正時代以前の古い美術品が綺麗に飾られていた。 父に昔、どこかの館に連れて行ってもらい、館に飾られている美術品の素晴らしさに目を輝かせ、父と館の主にたくさん話をして貰ったことを何となく思いだした。 あれはどこの貴族の館だったのかしら?雰囲気がどことなく、此処と似ている気もするけど。 懐かしさも覚えつつ案内された場所は、使用人が寝泊まりする屋根裏などではなく、客間の1つだった。 『あの、私は使用人の部屋ではなく、この部屋に寝泊まりをするんでしょうか?』 『間違いございません。旦那様が、この部屋を使って頂く様に準備を致しました』
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