至福の時

4/5
126人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
それから1年後には、綾音のお腹には新しい命を授かった。 同じ館に住み、社交界デビューを無事に果たした真奈も、綾音の妊娠を心から喜んだ。 綾音のレディズ・メイドとなった香代子も、心から喜び、祖母であるレディも館に時折り訪れては、日に日に大きくなっていく綾音のお腹をさすっては「貴女がお腹にいた時の事を想い出すわ」と言って目を潤ませた。 修も新しい命の誕生を待ちわびていた。 自分が父親になる事の感慨深さもあったが、亡き父・修三やトーマス達に孫の顔を見せる事が出来なかった事を悔やんでいたが、それも綾音が優しく受け止めてくれた事が救いだった。 産まれてきた赤ん坊は男の子だった。 元気な産声を上げ、綾音も修も満面の笑みで互いを見た。 真奈もレディを始め、館の従者たちも2人を祝福した。 館に新しい息吹が吹き込まれたかのように、新しい命は、館に目まぐるしいが穏やかな日々をもたらした。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!