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『これはメイソンの紅茶かしら?』
『そうですが・・・』
香代子は、驚きを隠せない表情でいた。
旦那様が言う通り、この女性はただの“家庭教師”とは違うみたいだ。
『・・・清水様はいったい・・・』
『ごめんなさい。余計な事をしたみたいね。気をつけるわ』
ここでは余計な事をすると、後で沢渡子爵に何か言われてしまうかもしれない。
子爵の家に戻れなくなって、紹介状もなく路頭を迷う事になりかねない。
雇い主の恥になるようなことは避けなくては。
一時的とはいえ、今は近藤公爵が雇い主も同然なのだ。
紅茶のカップを香代子に渡して、支度を始めた。
教育が行き届いたメイドで、ドレスの着替えから、髪の毛を整え、軽く化粧もしてくれた。
母が生きていた時に、公園に出かける日に鏡台の前に座らせて髪をとかして唇に軽く紅をさしてくれた事を想い出した。
『お気に召しませんでしたでしょうか?』
不安そうな表情をした香代子に、違うのよと首を振って応えた。
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