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『とても気に入ったわ。ありがとう香代子さん』
『わたくしのことは、“さん”付けは不要です』
『そうね。こちらこそ失礼な事をしたわね』
彼女の貴族社会での、上下関係が分かっている歴然とした対応に香代子は驚いた。
執事長の本村は、香代子から聞いた彼女の態度に、貴族社会での立ち居振る舞いを身を持って分かっていることに確信した。
下級の者に対する態度の取り方、上の者に対する敬意の払い方も上手い。
彼女の不思議な瞳の色が、館に訪れた時から気になっていた。
あの藍色に金色が差し込んだ不思議な瞳の客人に昔会っていた。
彼は帝英国の人間だった。
先代公爵と親密で、美術品の話を良くしていた。
たしか、幼い少女も一緒に来ていた事もある。
確信がある訳ではない。
あの時の少女が、館に訪れている家庭教師であると。
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