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男は用意をすると言って奥の部屋に入って行き、十分程で戻ってきた。
その手のひらには人型に切り抜かれた二枚の紙が乗せられていた。
青、赤の二色。
「お待ったせ致しまっした。ではこちらの紙に名前をフルネームで書き、息を吹きかけて下さい」
男を待っている間、これから何が行われるのか緊張していた袴田であったが、意外の単純作業に拍子抜けする。
「それだけでいいんですか?」
「ハハハ、皆初めはそう言うんですよね。難しい作業はありまっせんから安心して下さい! それに、残りの寿命が極端に短くなければ身体への影響も全く無いんですよ」
男は人差し指を立てながら誇らしげにそう説明した。
「そ、そうなんですね」
自分の寿命についての不安は残るが、今は妻が優先だと割り切った。
袴田は手渡された青の紙に自分の名前を書き、それに息をかける。続いて、赤の紙には妻の名前を書いた。
「ありがとうございまっす」
男は紙を受け取ると、青の紙を手に持ち、赤の紙をカウンターに置く。
「では手数料をいただきまっす!」
男がそう言うと――青い紙が一瞬ブレ、そこから同じ人型をした白い紙が剥がれ落ちた。
「ええっ!?」
袴田の驚きの声を気に留めること無く、男は作業を続ける。
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