俺の飯を食うな

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************* 僕は、今テーブルの上に置かれた、とても人間の食べるものではない ゲテモノを前にうんざりしている。 野菜などは、なんとか人工太陽や、水で賄われるのでなんとかできる。 問題は蛋白源だ。 地球上の全ての生き物は死滅してしまった。 かろうじて、この地下シェルター都市に逃げ込むことができたもののみが生き延びているのだ。僕は都市部に住んでいてよかった。 東京、大阪、福岡など、大都市にのみ地下シェルター都市があったのでなんとか生き延びている。他の地方の人間はたぶんすべて滅びたのだろう。第三次世界大戦でとうとう愚かな人類は核戦争を起こし、ごく一部の人間を残し、死滅してしまったのだ。 人間は動物性たんぱく質を取ることができなくなり、やむなく地中に住む蛋白源を食さなければ生きて行けなくなった。 今日皿に盛られているのは、みみずのソテーと、わけのわからない虫の佃煮だ。僕ははしでそれをつまみ上げ、お皿に戻した。 「ご馳走様。」 野菜のみを食して僕の食事は終わった。 「だめよ、ちゃんとたんぱく質摂らなきゃ。死んじゃうよ?」 母が心配顔で僕を見る。こんなものが食えるかよ。 僕は黙って、自分のお皿と茶碗を流しに運ぶ。 肉が食べたかった。魚が食べたい。 でも、地上のすべてが放射能で汚染されてしまった。 テレビで今日の地上の放射能情報が流れている。 地上の放射能汚染がなくなるまで、あと30年。 時々、シェルターから、調査団が地上に出て調査するのだ。 完全防護服を着て、シェルター内に放射能を入れないように、 厳重な扉から出て行く。 その次のニュースに、第三次世界大戦が始まる前に話題になっていた STAP細胞の研究で、細胞から初めて誕生したマウスが映し出された。 とても、マウスとは思えない醜悪な物で成功したと喜んでいる。 これから、牛や豚の誕生も夢ではないとアナウンサーが嬉々とした うそ臭い笑顔を振りまく。 僕は先日、シェルター出入り口まで、学校をサボって行ってみた。 この出入り口を出れば、地上につながるエレベーターがあって地上に出れるのか。そう思うと僕は以前の美しかった風景と、楽しかった学校生活を思い出して涙が溢れてきた。もう一度あの世界に戻りたい。 強く拳を握り、戻りたいと思った。
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