俺の飯を食うな

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階段を昇ると、懐かしい自分の部屋についた。 ドアを開けると僕の部屋のにおいがした。 和室特有の畳のにおい。僕はあのじめじめした自分の地下シェルターの暮らしの方を嘘だと思いたかった。 ベッドに寝転ぶ。 勉強机の横の大きな窓からは青い空と白い雲。 きっと、シェルターの外にもこの青い空と白い雲は存在する。 だがそこには目に見えない悪魔が棲んでいるのだ。  僕はその日一日、異世界を楽しんだ。 そして、その日の夕方も何食わぬ顔をして母の手料理を食べた。 「今日は早かったのねえ。部活は?」 僕はそう聞かれて、 「今日は休み。」 と適当な嘘をついた。 夕飯も豪華だった。久しぶりに肉を食べた。 から揚げだ。外がパリパリっとして中はジューシー。 ポテトサラダもうまい。母のポテトサラダは市販品のように 甘くなかった。地下でもポテトサラダは作ってくれるのだけど、肝心のハムがない。あの世界には肉が無いのだ。 僕はご飯をおかわりした。母はニコニコしながら嬉しそうにご飯をよそう。ご馳走様といい、僕は食器を流しに片付けて二階へ上がった。 ああ、ずっとこのままこっちの世界で暮らせたらいいのに。 久しぶりにゲームをした。地下は物資が少ないのでゲームなどぜいたく品。かろうじて持って行けたのは携帯ゲーム機で、やはり大画面でやるゲームは迫力が違う。僕がゲームに夢中になっていると、下で大きな声で争う声がした。しまった。ゲームに夢中で気付くのが遅れた。僕は慌てて、どこかへ隠れようと思った。押入れ、布団や物で溢れていっぱいだ。クローゼットなんて気の利いたものはない。窓から逃げるか。でもここは二階。飛び降りれば怪我をするに違いない。階段を駆け上がってくる音がする。早く!元の世界に帰らなきゃ!そう思って壁に張り付いたら、体がすうっと壁に吸い込まれた。 そして勢い良くドアが開き、もう一人の僕が叫んだ。 「誰だ、お前は!俺の飯を食うんじゃねえ!」 見事にもう一人の僕に見つかってしまった。体半分だけ。 僕はこの状況がおかしくなって笑ってしまって 「バレた。」 と言い残して、壁の中に吸い込まれた。
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