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「勝手に片想いしてるだけだから、先輩は今までどおり川島田先輩と仲良くしてください。先輩はあたしのこと知らないでしょうけど、一学期のテストは二回とも学年でビリでした。運動もまったくダメで、これは知ってると思いますけど、友達もいません。川島田先輩の評判は学年が違うあたしでも知ってます。あたし、まったく勝ち目ないですね。そもそもこの学校だって来たくて来たわけじゃなかったし」
「どういうこと?」
「あたし、中学でいろいろあったから、知り合いのいない通信制の高校に行きたかったんです。でも、親が普通の高校に行けってうるさくて。それで、レベル的に受かるわけないここを受けて、落ちたらさっさと通信制を受けなおすつもりが、なぜか合格しちゃって」
「ええっ!」
思わず大きな声が出てしまった。人がいなくて本当によかった。
「そんなにびっくりすることですか?」
「驚くよ。だって、おれと同じだもん。おれも通信制に行くつもりだった」
「そういえば、朝、あの子たち、先輩のことダメ人間って言ってましたね」
「そう。おれは実はダメ人間なんだから、君がおれを好きになるのは間違ってる」
「間違ってないですよ。だって似たもの同士なんだから」
なんだろう、この話の流れは? おれにとってまずい方向に流れているように思われて仕方ないのだけど。
「先輩って自分のことダメ人間って思ってるのに、いつも堂々としてますよね。先輩のそういうところが、あたしは好きです」
「…………」
今なんかめちゃめちゃ恥ずかしい。自分のこころを丸裸にされてしまったみたいで。なんだろう、これ? 別に彩湖に恋してるわけでもないのに、胸がドキドキする……。
「強志君!」
戸をガラッと開けて、部活帰りの優と深雪が入ってきた。助かったと思った。正直ほっとした。
優はいつもどおりだが、深雪はこころなしか元気なさそうに見える。
「強志君えらい。また彩湖ちゃんを守ってあげてたんだね」
「あ、うん」
「彩湖ちゃん」
優はしゃがんで、椅子に座っている彩湖と同じ目線になった。
「あたしたち三人と友達になりましょう」
「……うれしいです!」
彩湖の顔がぱっと華やいだ。でも、この子が笑うと、ニコッというより、ニタっていう感じになるんだよな。本人に悪気はないのだろうが、いじめられるのもその辺りと関係あるかもしれない。
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