第四章

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 翌日は一学期の終業式があった。君たちには無限の可能性があるとかないとか校長のどうでもいい話のあと、教室で担任から通知表が配られた。一年前の通知表は赤点が三つもあった。それが今回は赤点がないどころか、ふだんの自主勉ではどうにもならない体育や書道が2なのは仕方ないが、それ以外は5段階で3と4ばかり。思わず通知表を抱きしめてしまった。  「強志君、うれしいのは分かるけど……」  隣の席の優が、見てはいけないものを見るような目で、おれを見ていて、あわてて通知表を机の上に置いた。  「ときどきまわりが見えなくなるよね?」  「そうかもね。だって、まわりなんて気にしてこなかったから」  というか、まわりを気にしたら優とのつきあいも続いてなかったと思う。勉強を教えてくれてたころの優は、彼女というより保護者だよねと噂されて、今だってすごいと言われるのは優の方ばっかり。成績学年トップを維持しながら、万年学年ビリのぼっち君を更生させたどえらい女子、という感じで。優がいくら、強志君はあたしの彼氏でとまわりに言ってくれても、いつまでたっても優は王子様でおれはシンデレラ扱い。まわりが見えてたら、こんな扱い耐えられるかっての!  「強志君って強いよね」  「強くないよ。強くないから、見たくないものは見ない、というか……」  おれはまた通知表を抱きしめていた。  「二人でどこか行かない? おかげで成績すごい上がったから、そのお礼もしたいし」  「お礼なんていいよ。強志君が頑張ったからだし」  と言いながら優も乗ってきた。  「でも、一緒に遊園地行きたい」  ということで、次の日曜日、遊園地に行くことになった。
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