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大掃除もあったが、お昼前には放課後になった。図書室に行くと、もう彩湖が待っていた。でも、待っているあいだ、勉強をしてたような気配はなく、というか家から持ってきたらしいマンガが目の前に置いてあるのはなぜ?
「勉強教えてくれるのが、川島田先輩じゃなくて大坂先輩でよかったです」
昨日見たテレビ番組の感想を教えてくれるような軽さで、彩湖が言いだした。
「なんで」
「先輩もあたしといっしょで、一年生の一学期、赤点がたくさんあったんですよね?」
「三科目」
「あたしの半分か。なかなかやりますね」
なぜ上から目線?
「で、なんで勉強教えるのが優さんじゃない方がいいの?」
「だって、鷹にはとんびの気もちは分からないじゃないですか。あたしの能力を無視して厳しくしごかれそう」
おれまで〈とんび〉扱い? なに、そのこれっぽっちもうれしくないたとえ方。
「たとえ方が微妙だったですか? じゃあ、もっと分かりやすく」
隣に座る彩湖の顔がまたさりげなく接近してきた。
「月にはすっぽんの……」
「いいから勉強やるぞ。それと、ちょっと近すぎ」
「先輩、警戒しすぎ。先輩のことは好きだけど、川島田先輩がいない隙に、策略とかで先輩とどうにかなろうなんて考えてませんから」
「そうなんだ」
「あたしマンガ読むのが好きなんですけど、ひとの彼氏横取りしようとしてうまくいった話なんて見たことないですよ。逆に、二人の絆がそれでますます深まったっていうパターンばっかり。あたしそんなの嫌ですから」
「なるほど」
「昨日の夜から読み出したこのマンガもそういう話で……」
彩湖はテーブルに置いてあったマンガを取り上げて力説を始めた。あのー、赤点科目の勉強はいったい全体どうなってるんでしょうか?
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