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この世界でこの男を知らない人はいない。世界の革命家、コードナーに間違いない。その男が今、脳内で肉親の血を大地に捧げ、時間の遡行の糧にしている。軈て一人となった男は時間の遡行を試みるが、球体は激しく躍動した後、分散。その内の1つの彗星が洞窟を突き抜け、遥か彼方にある丘の上にに降り立たった。そして映像に映るロッジの中から歩み寄る1つの小さな影、その影が差し出した手が光を掴んだ所で映像はぷっつりと途切れ、レオンの視界は現実へと戻された。
口内に広がる土の味、土に接した左の頬に走る痛み。それらがレオンに映像の世界から戻ってきた事を知らせる。視界に入る剣は、纏った発光体を失いながらも、月光を反射して妖しく輝く。
レオンは今起きた事象を全て理解する事ができていた。自信の身体に流れ込んだ無数の発光体、それはアカシックレコードの欠片であり、星の記憶の一部。それらが今起きている事を、レオンに強制的に理解させた。
未だ地に伏せる少年は、開いた拳で土を抉り、それを強く握り締める。歯を食い縛り、下唇から流れ落ちた深紅の血が大地に垂れる。今、この世界は2度目の自転を開始した。そしてそれは暴走したアカシックレコードにより、延々と繰り返す。楽しい時も、悲しい時も、晴天の日も、雨天の日も。数分違わず、再現しながら廻りだす。未来を失い、ただ過去をひたすらに辿るだけの世界。そのことに人類が気づく事はない。
「こんなの、間違ってる」
震える身体を起こし、地面に突き刺さったまま悠然と佇む剣の柄を握る。そして一思いにそれを抜き取り、月に翳す。一寸の陰りのない刀身に、少年の強く見開かれた瞳が反射し映り込む。その瞳には無数の星が宿り、夜空の星に溶け込んでいた。
この日こそ、世界が未来を失い終焉した日であり、そんな中で産まれた一握の希望が、その歩を進め始めた日である。
少年の名前は アルベロア・ホークス・レオン。この話は星空の瞳を持つ少年の物語であり、この日から始まった長い闘いの記録の一部であるーー。
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