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剣に近づくにつれ、レオンの手に不思議な温もりが纏わり付く。今にも柄を握ろうと開かれた手には無数の発光体が舞い、レオンの腕を中心に美しい曲線を描きながらその身を輝かせている。それはさながら、天空で一際輝く銀河のようだった。
そんな未知の光景に自然と笑みが漏れる。恐怖や怖れと言った類いの感情は無かった。ただ、ひたすらな好奇心がその手に柄を握らせた。
レオンが柄を握った刹那、僅かに時が止まったような感覚が襲ったかと思うと同時に激しい頭痛に見舞われ、悲鳴に近い呻き声をあげその場に踞る。頭が割れるような激痛、激しくなる動悸、その痛みはまともに呼吸をする事さえ許さない。眼球は白眼を剥き、悲痛な叫びと荒々しい呼吸の音だけが山中に響き渡る。
そんな最中、本人の意思と関係なく脳内で映像が次々と切り替わる。まるで転写機のように一枚の写真を映し出したかと思うと、何が映っていたのか理解する前に次へと切り替わる。それを数秒間に何千と繰り返す事幾数分。地に伏せるレオンの身体はピクリとも動かない。
しかし、脳内は未だ映像を写し続ける。始まりより速度を落とし、写る映像も鮮明なものが多くなる。やがてその映像は見覚えのある光景を写す。
「‥‥サム‥‥サラ城‥‥‥‥?」
そう呟く頃には、激しい頭痛や動悸も幾分か治まってきていた。身体は未だ動かせないものの、脳内で写る映像へと意識が集中する。
祝終祭で賑わう人々の映像から、サムサラ城内の映像になったかと思うと、次には薄暗い洞窟の内部を写し出す。暫く暗闇が続いたと思うと、軈て暗闇の奥から射し込んだ小さな光。映像はどんどんそれに近づいていく。初めは小さかった光の正体は、洞窟の深部にポッカリと口を開けた空洞内に光る、巨大な球体であった。球体の周囲を埋める発光体は、たった今、自らが触った剣が纏っていたものと酷似していた。
そんな事を考える一瞬の内に、映像内には人影が集まり始めた。球体を取り囲むように老若男女が円を成し、その中心の球体付近には一人の男。白銀の髪を後に流し、切れ長の瞼の中には琥珀色の瞳が覗き、端正な顔立ちをしている。
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