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そんな斗真にリードされて外出したのは、頭がフリーズされたままに旅館近くのお土産屋さんが並んだ通りの散策と近くに神社を見かけてお参り。
この神社の名前を聞いたことがある。
様々な"縁"に関する願いを一生に一度だけなら叶えてくれることで有名のようだが、まだ一度も来たことはなかった。
静かに目を瞑り願うこと。
「斗真くんと、もっと長く一緒にいられますように」。
それは自然と心に宿った願い。
こんなに強く願うのはいつ以来だろう。
隣で真剣に手を合わせる斗真は何を願っているのか。
同じことを思ってくれてたらいいのに、と変な期待を持ち違っていた時のことまでを考えると問いかけることはできずにいた。
参拝を終えて旅館に戻る途中、何気なく向けた視線の先で記憶にひっかかる顔が映る。
・・・・・あっ。
斗真の袖を軽く引っ張った。
「斗真くん。……あそこ」
視線で知らせた方向をつられて見た斗真。
ハッと息を飲んで目を見開いた後、黙ってその方向を見つめた。
それは愛おしそうに。
けれど、ぐっと堪えたかのように顔を伏せると、無言で薫の手を取って早足で近くの脇道に入った。
その歩みは止まらない。
早足の斗真の歩幅は薫にとっては小走りになり、いくらか進むと息が切れてきた。
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