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広い露天風呂を独り占めしていた。
他の人達は夕食前に済ませてしまったのか、今は薫しかいない。
おかげでゆっくりと虚しさの原因を考えることができた。
異性と見れないから、泊まりに誘えた。
異性と考えないから、同じ部屋を予約した。
異性と感じないから、隣のベッドで眠ることになっても緊張もしない。
つまり、斗真くんはただの幼なじみにしか思っていないんだ、とそんな結論に達した。
そして、その結論にショックを受けている自分は、いつの間にか斗真のことを異性として見ていたのだということにも気付いた。
これは不可抗力だ。
すっかり一人暮らしに慣れてしまっていたところに、ぽっと現れた。
頼りになるのに時には母性本能をくすぐられ、仕事以外の時間を一緒に過ごしているのに1人の空間に戻りたいと思う瞬間もなかった。
たった一週間の間に、斗真がいることが当たり前になっていた。
分離することなく薫の生活の一部にきれいに溶け込んでしまった斗真の存在は、自然と恋の対象に変化していた。
神社での願い事を取り消せるならば「もっと長く一緒に」じゃない。
「ずっと傍にいてほしい」が本音なのだ。
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