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部屋へ戻る足取りが重い。
自分の本音に気づいたところで伝えられるはずがないじゃない。
だって、気持ちに気付いた時に一緒に思い出した。
叔母の言葉を。
「・・・・・なんでしょ?しばらく住まわせてあげてくれない?長期間ではないから」
確かにそう言っていた。
"長期間"ってどれぐらい?
それよりも、その意味は・・・。
部屋に入ると電気はついたまま。
窓辺に座っていた斗真の姿がなく一瞬ひやりとして、横目にベッドの上に寝転んでいる斗真を見つけて安堵した。
叔母の言葉を思い出したばかりだから尚更。
足音静かに近寄り、閉じた眼の前に手の平を振ってみる。
どうやら眠っているようだ。
ほぅーっと拍子抜けしたような、どうしてそう普通に眠れるんだと詰め寄りたいような。
だけど結局は安心していると薫にも眠気が襲ってきた。
「これぐらいはいいよね?」
もう一つのベッドに横になった薫は、隣のベッドからはみ出していた斗真の手を繋いで眠りについた。
すっかりと寝入った夜中に、目が覚めた斗真がぎゅっと薫の手を握り返したことを知らずに、とても幸せな夢を見ていた。
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