32人が本棚に入れています
本棚に追加
「かおちゃん。どうかした?」
「…あ。ううん」
「かおちゃんは笑ってる顔が一番かわいいのに。気難しい顔してブスになってるよ」
「え?そんなに?」
真に受けた薫とその様子を微笑ましく観察している斗真とでは、どっちが年上なのか分からない。
「冗談だよ」
助手席から伸びてきた手が、優しく頬をつねって口角を上げようとする。
・・・きっと自分の気にし過ぎなんだと、薫はこれ以上は考えないようにしようと自分に言い聞かせた。
せっかくの、いわゆるデートってやつを楽しまなきゃ損だ、とも。
斗真のその手に助けられて薫に笑顔が戻る。
後部座席にはジンベイザメのぬいぐるみが置かれていた。
2人の思い出を残すように・・・。
* * * * *
「かおちゃん。本当にありがとう」
寝る前になり、斗真は薫に向かって大きくがばっと腰を折るように頭を下げた。
「大げさだなぁ。また行こうね」
オーバーな斗真の態度に小さく首をすくめて明るく答えた薫は、今日の水族館をさして言っているのだと思っているようだ。
最初のコメントを投稿しよう!