最終話

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斗真は、薫と過ごした12日間への感謝が丸ごと込めて伝えていたのに。 本当のことは何も言えないから。 何か違うことをしても変に思われてしまうから。 お礼の言葉だけ・・・。 いつもみたいに「おやすみ」を言い合ってそれぞれの部屋へと別れた。 元からこちらの世界に滞在できる時間は決まっていた。 自分が生きていた年数がそのまま日数になる。 すなわち15日間。 薫に名前を呼ばれるまでに3日過ぎ、一緒に過ごせる期間は2週間もなかった。 薫には伝えていないだけで、薫の叔母である多鶴には伝えた。 だからこそ斗真が現れた日に薫への口利きをしてくれたのだった。 あとは彼女が目を覚ます前に、彼女の元を去らなければいけない。 彼女はこの15日間をすべて忘れてしまうから。 すべてなかったことになってしまうから。 これも最初から分かっていたことだった。 一つだけ例外を除いて。 それは、斗真の生前を知っている15歳未満の人だけは忘れない。
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