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「何を作られるんですか?」
「ジャンバラヤを作ってくれるのよねー」
質問に答えたのは、いつの間にか男の隣りに立っていたモデルのように綺麗な女だった。
まっすぐに伸びたつややかな髪は少しだけ明るい。大きな瞳と白い歯が印象的な顔立ちだった。
すらりと伸びた背は170センチ近くある。
彼女の華やかな笑顔を見て、本当にモデルなのかもしれない、と葉子は思った。
「ジャンバラヤ?」
「ニューオリンズの名物料理ですよ。この前久しぶりに食べたら、えらくウマかったんでね、彼女にも食べさせたくなって、今晩腕をふるおう、ってわけですよ」
にこにこと機嫌のよい声で男は答える。
ーーふーん、ジャンバラヤねぇ……
へー、ふーん、そうですかぁー。
「それは素敵ですねぇ」
冷ややかな心とは裏腹の営業トークが出てくる。
隣りの彼女が
「すっごく楽しみ。ね、ワインもも少し買って行くでしょ」
とひそひそと囁いているのが、葉子の耳にも届いた。
そのまま二人は精肉売り場に足を向け、葉子もさっきの作業に戻る。
表を見てもどこまでチェックしていたか、全然覚えてない。
「あー……!!」
葉子は小さく叫んで、髪の毛を掻きむしった。
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