故郷よさよなら

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母さんからおつかいを頼まれた。 隣町へ卵とりんごとパンを買いに来た。 いつのも市場で八百屋さんに少しまけて貰ってかごいっぱいに頼まれたものを入れ、帰宅するため機関車に乗って、それから少し眠った。 ―これはまだ、夢を見ているのだろうか。 窓の外、ちょうど俺の住む村がある方角。 闇だ、ブラックホールを思わせるほどの深く、暗い闇が覆っている。闇が広がれば木々を枯らし異界のモノへと変えていく。歌う鳥は人を食らうようになり、人は廃人と化す。 新聞を読んでいたおじさんが目を見開いて言った。 「ヤミカだ…ついにこの国にも」 ヤミカは闇化と書くのだろう。非現実な出来事を前にしても冷静でいられるのはまだ夢かなにかと勘違いしてるからだと思う。だからよくある手法をためすことにした 頬をつねった。 「痛いな…」 残念ながら現実らしい。 村の最寄り駅へ着くと急いで降りた。しかし駅員立ちに阻まれた。 「皆さん!お気持ちは分かりますが今は我が身を大切にしてください!これより先は危険です!臨時の避難所へ向かう汽車が間もなくこちらへ来ますのでそれにお乗りください。」 駅員が叫んでいる。 溢れかえる大人をかき分けて窓の外を見る。 村が異界に堕ちていた。 「カイ?無事だったの!?」 突如後ろからよく知った名前と声が聞こえた。 カイとは自分の名前だそして、声の主は 「クレイア??」 涙を服で吹いて自分の名前を呼んだ主の方へ振り返る。 いつも活発な彼女も今ばかりは泣きそうな顔をしている。 「良かった無事だったんだね。私も買い物に行ってた帰りなの。カイもそのかごを見るとおつかいの帰りなのかな。」 村のことには触れず、彼女なりの精一杯の笑顔で話かけてきた。 「ああ…」 しかしもとより話の苦手なカイは気のない返事を返した。 「とりあえず、もうすぐ避難所へ向かう汽車来るらしいから、乗ろ?それから私たちが出来ることを考えようよ。」 間もなくして汽車が来た。 移動中喋るものは誰ひとりとしていなかった。 避難所はセルルクという街の教会だった。 ボランティアの人々がせわしなく働いている。クレイアもそれに加わって毛布の配布をしている。 カイはそれに参加する気にはなれなかった。 街へ出る時腰につけて来た父から譲り受けた剣を握って深く考えた。
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