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空に突き上げるように振り上げた長い鼻は、それだけで一つの生物のように自在に動く。それより遥かに立派な足を動かす度に土が舞い、視界を曇らせた。
「すっげぇ……アフリカ象だ」
「感動してる場合じゃないよノヴァ!」
「でもさ、見てみろよ。屋敷で飼ってる象より遥かにデカイぞ!」
そう言いながら周囲を確認すると、目の前には象、後ろは海。リーチの長い象なら一気につめられる程の距離。
巨大象は甲高い唸りと共に、更に高く高く鼻を突き上げた。
皆、手に握るのは麻酔銃。しかしどう考えても、ちっぽけな銃が効く相手ではない。
ゆっくり、ゆっくりと視線を合わせないように左右に距離を取る人々と同じように、じりじりと距離を取る。無意識に震える足を引きずりながら。
その最中、突然に現状は変化した。
――パシュン!パシュン!
息もできぬ程の、緊迫を破ったのは発砲音。音のした方を見ると、険しい表情の見知らぬ二人が象目掛けて麻酔銃を放っていた。
軽快な音は次第に増え、重なるように音を鳴らし援護してゆく。
しかし、弾は象の肌を傷つけることすらできず、地面にバラバラと散乱していった。
【アフリカ象――象科アフリカ象属。
通常サイズ―体長7m、肩高4m 、体重7t。
嗅覚に優れた陸上生物の最大種。
人間の区別がつき、仲間の象が亡くなると『葬 式』をすることからも高い知能をもつと考えら れている】
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