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暑い程の日差しに包まれたこの土地は、年中この気候を守り人々からは笑顔が絶えない。
――たとえ貧困の町だとしても。
黒髪の少年が勢いよく玄関の扉を開けると、様々な色の蝶が舞った。
「アポロー! 行こうぜー!」
そのまま自宅を飛び出したかと思うと、すぐ隣の家の前に立ち大声で呼び掛ける。
「ノヴァ! じゃあ、母さん行ってくるね!」
するとアポロと呼ばれた少年は、軽やかな笑みを覗かせ金色の髪をなびかせながら玄関から飛び出してきた。
そしてそのまま二人はどこかへ走っていく。
小さな二人は息を切らせることなく草木の茂る道を全力で駆け、迷路のような道を迷わず進み、木々の間をすり抜け大きく跳ねたかと思うと、無事に砂浜に着地してみせた。
「あちっ、あちち」
熱された砂にはしゃぎながらも、二人は大きな流木を探して座る。
「ここなら誰もいないな」
そう呟くと黒髪の少年は、破れかけたズボンのポケットからグシャグシャの紙を出した。
黒々した瞳に空からの光を反射させ、その紙を隣に座る少年につき出す。
「……なにこれ? えーっと……冒険者、募集? 人類の発展の為に」
すると黒い瞳とは違い、青い瞳は不思議そうにその紙に目を這わせた。
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