冒険の始まり

6/19
前へ
/507ページ
次へ
 この国の人々は、元々1つの大陸だけで生活していた。  しかし冒険家であり生物学者であるアダム博士により新大陸が続々と発見され、急激に増えた人々や発見した動物達により文明が栄えていった。  確かな書物さえなく理論的には何一つ証拠はないものの『当たり前』として学校でも教わることであった。  そのせいか、この国では何より生物学が重要とされ、皆が義務教育にて、生物の種類や生態などを学ぶ。 「あら、帰ってたの」  突然の声に振り向くと、アポロの母親が穏やかに目を細める。  小さな部屋は3人でも窮屈に感じ、少しの体重移動ですら床がミシミシと悲鳴をあげる。それを「うふふ、壊れちゃうわね」と微笑むアポロの母親を見ると、心が和んだ。 「アポロ、おばさんに許可もらっとけよ! 俺も母さんに言ってくるよ!」  アポロの家を飛び出し、すぐ隣の自宅の扉を開けると、長い黒髪を束ねた後ろ姿が目に飛び込んでくる。 「母さん! 合格したんだ!」  驚く振り向き様に1枚の紙を差し出すと、そっと静かに手にし、じっくりと紙に目を通す。  そして――「やったわね!」背中をバンッと叩かれ、よろめいた。      
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加