黒翼の罪

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失われていない記憶の中に、こんな記憶がある。 俺が黒翼をもって生まれた理由は分からない。 俺には両親などいなく、気がつけばこの黒翼と共にこの世にいた。 真っ白な部屋でいつも一人ぼっち。 時折、世話をしてくれる人が入ってきたが、特に親しいわけでもなく、食事を置いて出て行くだけだった。 15歳くらいになったある時、気がつけば真っ白な部屋は無くなっていて、焼け野原に一人ぼっちだった。 どうしてこんなことになったのかという、肝心なところの記憶が無いのは、おそらく守護聖獣と関係しているのだろう。 俺はあてもなく歩き、小さな村で同い年くらいの優しい翼人と出会い、その子の家に一緒に住まわせてもらった。 その村には俺の黒翼を恐れたり嫌ったりする者はおらず、ただひっそりと農業をしながら暮らしていた。 毎日、空を自由に飛び回って遊んでいたあの頃が1番楽しかった思い出だ。 ところが、翼人が不老となる18歳になったある日、王都から俺の黒翼の噂を聞きつけた役人がやって来た。 俺はその人達に連れて行かれ、王都で豊かな生活を与えられ、学術を学んだ。 今思えば、俺の機嫌を損ねないようにし、予言の実現を防ごうとしたのだろう。 王都で医学の知識を得た俺は、城で専属医師となった。 それも、おそらくは俺の監視をするためだったのだろう。 俺が覚えている記憶はこの程度だ。
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