黒翼の罪

14/24

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
「……きて……起きてってば!」 コヨミの声で俺は目を覚ました。 「大丈夫? 物凄くうなされてたみたいだが。」 「俺はお前が作ったのか……」 セスは起きるなりそう言った。 「一体なんの夢を見た。 なぜそのことを知ってるんだ。」 「夢で見たんだ。 俺にはあれがただの夢だとは思えない。」 少しの沈黙の後、コヨミは意を決したように言った。 「知ってしまったのなら仕方がない。 セスの言う通り、私があなたを作った。 謝るつもりはない。 あなたが望んだことでもあるからな。 あなたは私の人生で最高の作品。 その忌まわしき黒翼でさえ、私は美しいと思う。」 「ふざけるな!」 セスはコヨミを突き飛ばした。 「この翼のせいで俺は……」 セスの目には怒りの色が浮かんでいた。 俺はこの女に利用され、今また利用されようとしている。 王を倒す事だってこの女の策略だ。 それは分かっている。 だが…… 「過去は変えられない。 お前のやった事は今の俺がやっていた事と同じようなものだ。 俺が責められるものではない。」 「いや、私のフェニックスならば過去は変えられる。 だが、それは出来ない。 フェニックスを守護聖獣とする者として、それが可能であっても、過去と未来を操作する事は禁忌だ。 それに、私は後悔などしていない。 そして、黒翼が正しい未来へと導く事を信じている。」 「どういう意味だ。」 「これは私しか知らない事実。 黒翼の予言の真実を教えよう。 黒翼を持つ者が現れた時、全ての翼人を救うだろう。 記憶を司るムニンを守護聖獣とする偽りの王を倒すであろう。」 「そんなまさか…… お前が作った偽りの予言だろう。」 「信じてもらえないのは承知の上。 だが、私があなたを作ったのは予言の実現を望んだから。 私は知っている。 あの王は偽りの王である事を。 私は知っている。 あの王がすべての民の記憶を操作した事を。 私は知っている。 今日、あなたは王を倒し新たなる王となり、全ての翼人を救う事を。 私の守護聖獣フェニックスならば過去を知る事など造作もない。 たとえ記憶を操作されようとも、私は何度でも過去を知る事ができるのだから。」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加