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バリバリと骨の噛み砕く音をさせて美味しそうに食べるドラゴン。
その傍らに立つセス。
次の瞬間。
セスの失われた記憶が蘇る。
人間界にいた頃から今までの全ての記憶が。
幼いセス。
教会で出会ったコヨミに天使様のような翼が欲しいかと誘われた。
俺は二つ返事で答えた。
だが、俺を待っていたのは過酷な人体実験の日々。
自由などなく、いつも真っ白い部屋に一人ぼっちだった。
苦しい人体実験が終わって意識がハッキリしてくると、背中には黒い翼があった。
この頃に、ようやくコヨミとまともに会う事が増えた。
コヨミはいつも優しくて、黒翼の事を詳しく教えてくれた。
俺はすぐにドラゴンを使いこなした。
俺が黒翼に馴染むたびに、使いこなすたびに、コヨミが喜んでくれるのが嬉しかった。
ところが、あの事件は起こった。
一面に広がる数え切れない墓。
俺以外の人体実験に耐えられなかった人間たち。
この人達を殺したのは誰?
その答えを知った時、俺は激しい怒りを覚えた。
事件はその時起きた。
「人殺し。」
俺の憎悪に反応したドラゴンが暴れ、施設は一瞬にして火の海に包まれた。
これが失われた記憶。
俺の出生の秘密。
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