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彼はその翼を罪だと言う。
マッドサイエンティストが集められた国家機密の科学機関。
その名も『狂科学研究所』。
そこで最も極秘扱いされているのが彼、コードネーム『セス』だ。
それもそのはず、なぜなら彼は……
バサッ!
黒翼の持ち主だから。
「やはり人間ごときに黒翼は扱えない。」
そう言い放つと、目の前の実験体を冷徹な目で見つめる。
特殊な液体のカプセルに入れられた若い男。
背中に黒翼があるが、男の息は既に無い。
「哀れな人間よ、所詮我々には及ばない下等な生物にすぎないのか。」
黒翼とは、不老不死の翼だ。
彼がどこで生まれ、どこで育ったのかは誰にも分からない。
ただ、不老不死は人類にとっての夢。
彼の黒翼にマッドサイエンティストは魅了された。
「セス様、次の実験の時間です。」
研究員に呼ばれ、彼は翼をひるがえして声のする方へ歩いていく。
俺のような覚醒者は現れるのだろうか。
今日もまた、彼は自身の黒翼のクローンを人間の背中に移植し続ける。
彼がどうして人間を覚醒者にしたいのか誰も知らない。
ただ、彼が人間などではなく、もっと高等な生物なのだという事は研究員全員が理解していた。
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