黒翼の罪

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「気は済んだ?」 コヨミの声が聞こえ、俺は我に帰った。 「ああ…… 俺はなんという事を…… 憎んだ相手と同じ事をして、味方であったはずのお前も……」 「お許しください!」 突然、騎士達が跪き、口を揃えて言った。 「この国の民は偽りの王に洗脳されていただけでございます。 我々とて同じ。 しかしながら、真の王たる黒翼の王を傷つけた無礼は極刑を免れないでしょう。」 そう。 俺から失われた記憶の最も重要な記憶。 それが…… 「この国の真の王は俺だ。 先王に村から城に招かれ、その後継者となった。 あの偽りの王に先王を殺され、俺は記憶を操作され人間界へと送られた。 本来ならば、先王の亡き今、俺が王になるはずだ。」 「その通り。 先王は予言により自分が殺され、この国が偽りの王に支配される事を知っていた。 私に黒翼計画の命令が下されたのはその為だ。 万が一予言が実現してしまった時に、予言の救世主たる黒翼を持つ者がいなければ救いはない。」 「俺が城で高等教育を受けさせられたのはそういう事だったのか。 先王には悪いが、俺は罪を犯しすぎた。 この国の王には相応しくない。」 急に外が騒がしくなってきた。 振り返ると、城の周りに民が集まってきている。 偽りの王が倒された事により、国の民全てが真実の記憶を取り戻したのだ。 「セス様!! セス国王万歳!!」 「セス様、お忘れですか?」 騎士が言う。 「あなたは城の専属医師となられた後、城の者だけではなく、城下の民の治療も無償で行われた。 それによって救われた民は数知れず。 あなたはあちらの世界で罪を犯したかも知れませんが、こちらでは民の、いや、国の救世主なのです。 偽りの王を倒した事はもちろんですが、それ以前にもあなたはこの国を救われている。 王になるにふさわしい人物が貴方様以外にいるでしょうか? 何より、民がそれを望んでおられます。」
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