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言われてみれば、そんな事もした。
「俺はこの国にいても良いのだろうか。
この国の王になっても良いのだろうか。
コヨミの仲間を殺し、多くの人間を殺し、血で汚れたこの手を民は取ってくれるだろうか。
救った人以上に俺は殺してきた。」
「あなたはこの国の真の王。
罪の数以上にこの国を、民を救えばいい。」
コヨミがそう言った。
そうか、この国の王になる事が俺の贖罪。
この国の幸せを、民の幸せを……
セスは目を瞑り、そして決心した。
正門に集まってきている民によく見えるように、城の正面にある王を謁見できるように作られたバルコニーへと黒翼の翼をはためかせて飛び上がる。
そして、黒翼を民からよく見えるように大きく広げて言った。
「偽りの王は永遠に葬った!!」
民から歓声が上がる。
「そこで問う。
俺はこの国の王にふさわしいとはとても言えない事をしてきた。
その罪の贖罪として俺は王になりたいと思う。
この命、この国と民に捧げたい。
このわがままを許してくれるだろうか!」
一瞬静まり返った中に、1人の声が響き渡る。
「セス様。
セス様が犯したって言う罪を俺たちは知りません。
もし知っていたとしても、これまでに救われた翼人は数知れないと思います。
不老不死の翼人でも、いや、不老不死だからこその苦しみがあります。
戦争になれば他国の守護聖獣の攻撃を受けます。
守護聖獣の攻撃は治りが遅く、傷が深ければ死ぬ事もあります。
あなたは城の専属医師であるに関わらず無償で民を助けてくれました。
黒翼のドラゴンでこの国を他国の戦争から守っていただいた事もあります。
それに、俺のような翼を無くした翼人堕ちは、人間と同じように病気になり、怪我もします。
何度救われたか分かりません。
多くの翼人が翼人堕ちを差別し、普通の暮らしを失っていったというのに、あなただけは違いました!
あなたのような方こそ俺は王にふさわしいと思います!!」
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