黒翼の罪

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とある空き別荘で、俺は身を隠すことにした。 良いのか悪いのか、俺は飲まず食わずでも死なない。 いや、正確には死ねない。 実際には死のうと思えば方法は無いことは無いのだが、俺はそんな事はしない。 してはならない。 なぜなら、俺にはやらなければならない事が残っている。 例の実験が関係している事だ。 「お待たせ。」 突然コヨミの声が聞こえて、我に返った。 「よくここが分かったな。」 「私には分かる。 安心して、私はしくじったからクビにされた。 つまり、今はフリーだ。 ま、こうなる事を予想してやった事だ。」 「どういう意味だ。」 この女の考える事はよく分からない。 初めて会った時からずっとそうだ。 他の狂った研究員とは何かが違った。 別に女だからとかそういう問題では無い。 根本的な何かが違った。 だからこそ、俺はコヨミに興味を持った。 「お前の目的は何だ。」 「あなたを救う事。」 「俺を救うだと? 俺は誰からの助けも求めていない。 俺が求めているのは……」 「あなたの過去。」 「っ!!」 この女は俺の何を知っている? 俺の過去は人間には到底知り得ない。 セスは翼を広げる。 「俺の苦しみなど誰にも分からない。 お前に何がわかる。 この黒翼の秘密を知っているとでも言うのか。」 コヨミがそっと黒翼に触れる。 「いつか、あなたは言った。 この黒翼は罪だと。」 そっと翼を撫でる。 「そうだ。」 「でも、あなたの罪じゃない。」 コヨミはセスの翼に顔を埋めた。 「ずっとこの翼が好きだった。 本当に、ずっと昔から…… だって、私は……」 コヨミの背中から白い翼が現れる。 「私はあなたの仲間だから。」
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