黒翼の罪

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「っ!!」 バサリと一度羽ばたいて、コヨミは翼を閉じた。 「あなたが求めているものは仲間。 自分と運命を共にしてくれる相手。」 コヨミは、生き残りなのか…… あの事件の…… あの、忌まわしき黒翼の予言の事件の…… ただ驚いているしかないセスにコヨミは言った。 「私の存在がそんなに不思議? 黒翼の予言、黒翼を持って生まれし翼人は翼人を滅びへと導く。」 「予言通り、俺はあの日……」 そこで言葉を詰まらせる。 「俺はあの日、何をしたんだ?」 思い出せない。 あの日だけが、思い出せない。 「かわいそうなセス。 あの研究所で研究していたのは本当に人間の適合者を探し、不老不死を解明する事? 研究していたのは本当にあなたの意志? どうしてあなたは研究所から一歩も出られなかった? いつからあの研究所にいた?」 「どういう意味だ……」 「真実はこう…… 予言を恐れた翼人の王があなたの記憶を一部操作して人間界へと送り込んだ。 あの日、翼人は誰一人死んではいない。」 「そんなはずは……」 「あの研究所はあなたの檻。 あなたはありもしない罪の意識と孤独に人間から翼人、つまり覚醒者を生み出そうとした。」 「あの研究所にいたのは確かに人間だった。」 「その通り。 でも、人間から翼人を生み出す事は出来ない。 けれど、人間が実験を中断する事はない。 あなたの檻にはピッタリ。 必要な翼人は監視の私一人で十分だった。」
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