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次の日の夕方、私はまた美術室のステンドグラスの前に立っていた。
「佐々木先輩、私もう作品できているので、しばらく来ませんね」
と言っていた後輩。
「佐々木さんがいい作品作りができるように、ちょっと私達も気を遣うね」
とサボりたい理由を私のせいにして逃げる先輩達。
何か真面目にスケッチブックとにらめっこをしている自分がバカみたい。
だから今日はあの人の悩みにトコトン付き合うつもりでいる。
私はステンドグラスに触れた。
「もう来ているかな……?」
ステンドグラスの向こう側に人がいそうな気配はなかったが、もしかしたら来ているかもしれない。
すると、
“……!!やっぱり話しかけてきた。ありがとう、俺は来てるよ”
という声が聴こえた。
「…昨日は驚かせたかな?」
“びっくりしたけど、ずっと悩んでいることを話せて嬉しかった”
「…私で良かったら、また聞くよ」
“ありがとう。……じゃあさ、ちょっと変なことを聞くけど、シナノキさん…って勝手に呼ぶけど、シナノキさんは恋をしたことってある?”
「………!?」
この人は何を聞いてくるのだろう?このボブヘアーの地味な最下層女子高生に上級者向けの質問をしてくるとはっ。
私は思わずうろたえる。
「ないに決まってるでしょ!……あ、昨日あなた、恋の歌の気持ちが分からないって言っていたけど、もしかして……あなたも恋をしたことないの?」
“……そうだよ。だから悩んでいるんじゃないか。で、君は俺に「恋をしてみたら?」って言ったんじゃないか”
「そ、そうだったね…」
“で、そのアドバイスに従おうと思っているんだけど、俺は好きな人ができたことがないんだ。どうやったら、好きな人はできるんだろう?”
うーん……、ど、どうすればいいんだろう?
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