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音色の元は多目的教室だった。多目的とは名前だけで、実際は空き教室と変わらない教室からギターの音がする。
何でギターの音が聞こえるんだろう…?
私はドアの窓から覗き込む。教室の中にはギターを持った男の子とキーボードの前に立っている男の子がいた。
何部だろう……?
「じゃあ、健(たける)。もう1度合わせるよ」
と、ギターの男の子が言う。
「OK。最初からだな。タイミングを頼むな、瑛一」
キーボードの男の子がギターの男の子に視線を送る。
「OK。じゃあ、いくよ。……1、2、3」
前奏が流れ始めた。
あ、この曲知ってる。有名なバンドの恋愛曲だ。うわぁ、上手…。……分かった、ここはバンドの曲を歌って弾くバンド部だ。そういえば、毎年文化祭で歌声を披露していたなぁ。
私は楽しそうに歌う2人を見つめた。
……あの彼はきっとここにはいないだろうなぁ。1人で悩んでいるから…。彼がこういう部活に入ったら、一緒に夢に向かう仲間が増えるかもしれない……
私はこの部活のことを急に彼に教えたくなった。
もしかしたら、彼はもう来ているかもしれない。
……急いで美術室へ行かなくちゃ!
私は走って、美術室へ向かった。
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