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……文化系女子には2階から1階までを全力で走るっていうのはかなり無茶なことなのかも……。
残暑が厳しい8月末ということもあり、美術室に着いた私は息切れ汗だくだった。
私は真っ直ぐステンドグラスに向かい、右手を前に出す。
「ハァハァ…。ごめんね。もういないかな…?」
もしかしたら、もう帰っちゃった……?
返事がないので、不安になる。
約束を破っちゃった……。
悪いことをしたという思いでいっぱいになった時、
“……待ってたよ”
彼の声が聞こえた。
“……俺、さっきからずっと話しかけていたのに、無視されて寂しかったよ。どうして返事をしてくれなかったの?お願いだから…………、正直に教えて欲しい”
静かな声で言われた。
悪いことをしたという気持ちと、彼が放った最後の言葉がズシンと私の心にのしかかってきた。
……やっぱり、正直に話そう。彼を悲しませたのは事実だから、正直に答えよう。
私はそう決意した。
「……ごめんなさい。私はステンドグラスじゃないんです。一美術部員なんです。あなたと同じように悩んでいて、あなたの悩みを聞きたいと思って、ステンドグラスの振りをしていました。本当にごめんなさい。」
少しの沈黙もがとてつもなく長い時間に感じた。
「あなたの悩みをバカにしたくて聞いていた訳じゃないんです。…だけど、あなたを騙していたのは事実なので……。もう話しかけません。本当にごめんなさい」
私はステンドグラスから手を離そうとした。その時、
“待って!!”
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