放課後の時間―倉石 愛音―

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「…あ、次の曲は……」 次の曲のイントロ部分を聴いて、俺は思わず立ち上がり、後ろのステンドグラスに寄り掛かる。 このステンドグラスはシナノキが描かれている、らしい。話しかけるとしゃべるという噂がある。 今聴いている曲は、大人気シンガーが歌った恋がテーマの曲。なんだけど…、 気持ちが分からなくて歌えない……。恋をするってどんな気持ちなのかなぁ…。 歌いたいけど、歌えない。これはかなり歌手を目指している人間にとっては厳しいと分かっている。 だけど、せめて……。 「ララ~ラララ~…」 いつか歌えるかもしれないと思って、俺はハミングで歌う。すると、 “綺麗…” という声が聴こえた。びっくりした俺は思わずステンドグラスから離れる。 「誰もいないはずなのに…。まさかステンドグラスが……?まさか……」 恐る恐るステンドグラスに手を触れる。聴いている恋の歌がサビの部分になった。 気のせいだよな…。じゃあ、試しに……。 「俺、諦めた方がいいのかなぁ。…俺、歌を歌うことが大好きなんだけど、歌手になる夢を諦めた方がいいかもしれない。友情とか夢の歌なら気持ちが分かるから歌えるんだけど、恋愛の歌が歌えない…。数多く歌われている恋の歌の気持ちが分からないって致命的だよね」 誰にも言ったことは無いことを話してみる。 やっぱり気のせいだよな……。 “じゃあ、恋をしてみたらいいんじゃない?” ………!!やっぱり、ステンドグラスがしゃべってる!!しかも今まで誰にも離したことない悩みに対して答えてくれた!! 「やっぱり木が喋った!すごい!ステンドグラスの木が話す噂は本当だったんだ!!」 今まで抱えていた悩みを聞いてくれる存在がいることを知って、俺は思わず嬉しくなった。 「ねぇ、また君に話してもいいかな?」 思わず尋ねてしまった。すると、 “いいよ。明日の放課後またおいで” とステンドグラスが答えてくれた。 「ありがとう!」 俺は手を上げ、その場を後にした。
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