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恋は盲目とはよく言ったものである。
相手の事がもっと知りたい、喜んでほしい、もっと愛したい。
でも相手の考えや心情がわからないから、どうすればいいのかわからない。
だから必死に相手に近づこうとしたり愛を確認しようと躍起になったりするのだろう。
人は身体を触れ合わせることしかできない。
相手の心を覗いたりすることはできず、やわらかな皮膚の内に隠された「心」に触れることはできない。
それは壁である。誰もが持つ、何人にも侵されざる聖なる領域。
人が作り出す壊れることを知らない脆弱な壁。
それは愛でさえも壊すことができない。人が手を取り合い、どんなに近づこうとも、人と人は超えられない壁で隔たれているのだ。
人がどんなに身体を密着させようと、身体を裂き内臓に触れようと、人の心は果てしなく遠い「0距離」にある。身体の持ち主以外が触れる事は決してできない。
壁は持ち主を壊すこともある。
壁をなくし相手に本当の自分を見てほしいと思ったとしても、壁は消えない。
相手に自分を伝えようと躍起になって、空回りして、最後にはその人が居なくなる。
例え、自分がどれだけ辛くて誰かに助けを求めようとしても、壁が行く手を阻み、自分を殺す。
逆に、相手が歩み寄り心に触れようとも、その手は永遠に届かない。
そんな脆くも強い壁に囲まれた世界で、人は何を思うのか。
愛とはなんだ、敵意はなぜ生まれる、友情に価値はあるのか?
そもそも価値とはなんだ?
まず人ってなんだ?
壁はなぜ存在する?
なら、逆に、「すべてを拒むことができたら?」
現実に、心が持つ壁を具現化できるとしたら?
心よりも前に、肌に触れる事さえも拒むことができたら
それを望む心の持ち主はどれほど優しく、寂しい世界にいるのだろうか。
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