第3章

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そういう自分も、少し酔いが回ってきたなと感じた。そろそろウーロン茶か何かにした方がいいかもしれない。 「あ、と」 食事を終えて。テーブルの上に出していた乾きモノのおつまみの皿を、青羽の指が引っ掛けた。ばらりとナッツがテーブルに零れる。 「スミマセン」 「酔ったのか?」 手を伸ばしてくる彼を制して、零れたつまみをゴミ箱に放り込んだ。 「少し横になるといい」 言いながら空になったビールの缶を寄せる。 ふっと視線を感じて顔を上げると、黒い瞳が見つめていた。 その視線が……まるで身体の上を這うようで。 不意に質感を変えた彼の瞳から、目が離せなくな った。 「……青羽くん?」 知らず息を詰めた時、不意に伸びてきた彼の腕に抱きこまれた。 「あお――」 最後まで言い終えることは出来なかった――唇を塞いだものが、彼のそれであることに気づくまで、数秒かかった。 頭の中が真っ白になる。 ――これは……なんだ?――彼は、なにを……。 反応できないでいるうちに床に押し倒された。背中に当たった固いフローリングの感触が、はっと思考を呼び戻す。 青羽くん、と出した声が掠れていて、それにまた動揺する。 「させて」 彼の唇から零れた言葉に、身体が硬直した。 「ね、知ってたでしょう?俺の気持ち――分かってて……」 「なに――言って……」 ようやく意味のしみとおってきた彼の言葉。 俺を――抱こうと言うのか? まさか……そんな、馬鹿なと、その言葉だけが渦巻く頭の中。止めろと抵抗する身体を押さえこまれた。 重なってくる唇から、顔を背ける。 「止めろッ!」 ようやく怒鳴り声らしきものが出る。 「やめない」 間髪入れず、断固とした声で返されて。俺は息を呑んだ。 「止めない――たとえここに、奥さんが来たって」 黒い瞳に浮かぶのは、紛れもない欲情の色。それに視線が絡め取られる。 唇を開いたが、喉が引 き攣るばかりで言葉が出ない。 「……奥さんよりもずっとよくしてあげる」 囁いた彼が、もう一度唇を重ねてきた。 いきなり深くくちづけられて、一気に体温が上がる。 割られた唇から忍び込んできた彼の舌が、口の中で暴れまわった。ざらりとした舌が口腔を蹂躙する。 「――っ」 いつの間にかシャツの中に滑り込んでいた彼の掌が、素肌をまさぐる。胸を掻かれるように爪を立てられると、そこからむずがゆいような感覚が広がっていった。 「……っ、んぅ――っあ」
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