第3章

4/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
いきなり唇が開放されて、知らず上がった声がまるで自分のものではないようで。 思わず手の甲で口を覆った。 「……感じます?」 「――ッア」 離された唇が、今度は胸に落とされて。固くしこってきたそこに歯を立てられる。 下肢の間に蟠ってくる熱に気がついて狼狽した。 ……それに気づいたのだろう。彼が微かに笑っ た気配に、かっと顔が熱くなる。 嫌悪を感じてもいいはずだった……同性に組み敷かれて、いいように嬲られて。 彼の指や唇が引き起こすものは、悪寒であっていいはずだった。 ――なのに、身体に満ちてくるのは、確かな熱。 自分がどうしてしまったのか分からない。どうしたらいいのか、どうしたいのかも分からなか った。 奔流に呑まれまいと、ただ目の前の身体に縋った。 ……熱い滾りに投げ込んだのは、当のその男なのに。 だから含みこまれるまで、着衣を剥がれたことにも気づかなかった。 乾いた感触の髪がぱさりと腹を打ったと思うと、ぬるりと熱いものに自身が包み込まれた。 それが彼の口腔であることに気づいた途端、思考が飛んだ。唇から悲鳴めいた声が漏れる。 羞恥と混乱と、間違えようのない確かな快感。それらがせめぎあって何も考えられなくなった。 俺を包み込んだ熱い粘膜が、きつく締めつけてくる。緩急を心得たその動きに翻弄された。 先端を擽る舌よりも、上下する唇よりも、握ってくる長い指よりも。 行為を行っているのが青羽であるという、その認識に煽られた。 あっという間に登りつめた快楽が弾けて――一気に理性が戻ってくる。 「あ……っや、め……」 果てた後のそれを、彼がまだ舐めまわす。 理性の戻ってきた身体には彼の行為はもう耐えがたかったけれど。しっかりと抱き込まれた下半身は、身を捩ったところで逃げようがなかった。 残滓を搾り出すようにきつく吸い上げられて、思わず腰が浮く。潤んだ視界に、欲望で汚れた唇をゆっくりと舐める彼の顔が映った。 「あお……」 「美味しいよ」 俺の言葉を遮って、彼が笑みを浮かべる。いつもの太陽のような笑顔とはまるで違う、淫蕩な表情。 「早いね……口でしてもらったこと、ないの?」 揶揄するように言われて、また顔が熱くなった。 「……じゃあ、ここも舐められたこと、ないよね」 「あ……」 言われた意味が分からないままでいる内に、彼が下腹部に再び顔を伏せてきた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!