第3章

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もう一度愛撫されるのかと思った下肢を違う風に押し広げられて、狼狽に身体が強張った。 「……な……っ」 思いもよらない場所にぬるりと舌を押し当てられて、反射的に閉じようとした膝を掴まえられる 。 下肢に施される行為が混乱する思考に拍車をかけた。 「や――っいや、だ」 そんなところ、と掠れる声で訴える。 「男同士は、ここ、使うんですよ……それくらい知ってるでしょう」 直接身体の中に囁かれて、上がりそうになった声を噛み殺す。 大きく下肢を割られて、ゆっくりと体内を掻き回される。彼の指で拡げられ、舌で舐め回される箇所だけが、すぐに感覚の全てになった。 今までに味わったことのない、とろりと重い快感が下肢から身体を呑み込んでいく。 ぴちゃぴちゃと立つ水音が聴覚を犯す。太腿の内側に青羽の熱い息を感じた。 達しそうになるたびに根元を指で締め付けられて、過ぎた快感が苦痛に変わってくる。 「指、増やすよ」 声と同時に、長い指がもう一本入ってきたのを感じた。最初に感じた圧迫感はすぐに愉悦に変わった。 ゆっくりと出し入れされる指。その爪先が体内を滑るたび、瞑った瞼の裏に極彩の色が躍る。 「……ッ」 昂ぶりの下の弱い器官を彼の唇に含みこまれて、思わず腰が浮いた。歯を立てるような愛撫に体内が収縮する。 埋め込まれた青羽の指の形をまざまざと感じて――奥まで暴かれていることを教えられたが、もう羞恥は感じなかった。 快楽の喫水線ぎりぎりで溺れる身体に、考える力はなかった。 ただ解放されたくて、請われるままに強請る言葉を口にしたような気もする。 霞んだ視界が一瞬戻ったのは、青羽の指が引き抜かれた場所に別のものを当てられて。 次の瞬間身体を裂かれた衝撃に、火傷しそうに熱いそれが青羽自身だと知った。 いつ自分が達したのかも分からなかった。 身体を割った青羽の滾りが動くたび、悦楽の波が押し寄せる。 彼を包む自分の中が甘く収縮するのも、突き抜かれるたびにこらえきれず声が零れるのも、もう自分ではどうしようもなかった。 その後のことは、よく覚えていない。 体内を抉り続けていた彼自身がいつ出て行ったのかも、力の入らない身体をいつタオルケットに 包み込まれたのかも。 ――すき。 眠りに呑み込まれていく意識の中で、優しく落とされた言葉だけがいつまでも波紋を広げていた。 >第3話 完結編 に続く
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