第3章

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俺を――抱こうと言うのか? まさか……そんな、 馬鹿なと、 その言葉だけが渦巻く頭の中。 止めろと抵抗する身体を押さえこまれた。 重なってくる唇から、 顔を背ける。 「止めろッ!」 ようやく怒鳴り声らしきものが出る。 「やめない」 間髪入れず、 断固とした声で返されて。 俺は息を呑んだ。 「止めない――たとえここに、 奥さんが来たって」 黒い瞳に浮かぶのは、 紛れもない欲情の色。 それに視線が絡め取られる。 唇を開いたが、 喉が引 き攣るばかりで言葉が出ない。 「……奥さんよりもずっとよくしてあげる」 囁いた彼が、 もう一度唇を重ねてきた。
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