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俺を――抱こうと言うのか?
まさか……そんな、
馬鹿なと、
その言葉だけが渦巻く頭の中。
止めろと抵抗する身体を押さえこまれた。
重なってくる唇から、
顔を背ける。
「止めろッ!」
ようやく怒鳴り声らしきものが出る。
「やめない」
間髪入れず、
断固とした声で返されて。
俺は息を呑んだ。
「止めない――たとえここに、
奥さんが来たって」
黒い瞳に浮かぶのは、
紛れもない欲情の色。
それに視線が絡め取られる。
唇を開いたが、
喉が引 き攣るばかりで言葉が出ない。
「……奥さんよりもずっとよくしてあげる」
囁いた彼が、
もう一度唇を重ねてきた。
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