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月日が流れた。
僕がここに来て抱いた疑問は、紛れもなく事実だと言うことに気付いたのは、割と間もなくだった。
どう考えても成長が早すぎる。
純粋無垢だった女の子は、今やしなやかな女性になっている。
その成長速度は、さながら竹のようだ。
僕は仮説を立てた。
ジジイは講習だなんだと、よく家を空けた。
それはここでは成し得ないことをしに行っていたのではないかと。
年老いてからようやく恵まれた子供。
我が子なら、その辺はジジイもワイフさんもよく頑張ったなと称賛するしかない。
もしかしたら、どこからか引き取ったのかもしれない。
そこは定かではないが。
順当に年数を重ねたのでは、かぐやが大きくなる前に命尽きてしまう。
だから……。
ジジイは竹に精通している。
出張と偽って、しかるべき場所で秘密裏に研究を重ね、その遺伝子の成長速度の部分を、かぐやに投与したのではないか。
そうなればこんな山奥でひっそりと生活しているのも頷けるのだ。
僕が正直にジジイに疑問をぶつけると、ジジイがこの事は誰にも喋るなと金を握らせてきた。
当然僕はそれを断った。
金で解決することではない。
もちろん誰に言うつもりもない。
何年も毎日顔を会わせた女の子。
他になにもすることがないこの山奥で、どんどん美しく成長していく姿を追う内に、気持ちが特別なものに変化するのは自然なことだった。
何より僕の心を占めたのは、彼女と僕との共通点だった。
かぐやは紛い物。
それは大きな喜びでもあった。
僕たちは何かしら偽りを背負っているけれど、そんな僕たちだからこそ「本物」を作っていけるのではないかと思ったのだ。
僕の他にも家庭教師は数人いるが、竹細工に一番興味を持ったのは僕だ。
ジジイに技術を伝授してもらい、一番出来が良いのも僕だ。
自由の国で培ったレディファーストの精神はワイフさんにとても好評だ。
決して二人の僕に対する評価は悪くない。
かぐやに至っては、籠の中の鳥のような生活にも関わらず、僕が様々な話をするから、勉強時間をとても楽しみにしてくれている。
……勝算はありそうだ。
残り物に福はない。
先手必勝、欲しいものは欲しい。
徐々に外堀を固めるべく、ジジイにかぐやとの将来を考えていることを伝える。
ジジイも先を考えていたのだろう。
僕に見合いの提案をしてきた。
あろうことか、他の家庭教師も一緒に。
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