小さな手紙

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「……どうしたい?」 揃いの湯呑にお茶を入れてくれてから、彼女は落ち着いた口調で言った。 「あなたがこのまま2人でいても無意味だと思うのなら、この離婚届に名前を書いてくれてもいい。 でも、まだ一緒に幸せになる覚悟があるなら、やり直そうよ」 「幸せになる覚悟」という言い回しが、彼女らしいと思った。 そうか、俺は幸せになる覚悟がなかったのかもしれない。そう考え、湯飲みの表面に浮かぶ産毛のような湯気を眺めた。 正面を向くと、俺の返事を緊張しながら待っている妻がいる。 その胸元には、米粒が付いている。それが食いしん坊の子供のようでクスリと笑った。 返事を待つ彼女に、とりあえず今一番俺が願うことを言った。 「……明日さ。一緒にメシ、食おう」 終
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